「帰ろ」
もう一度言われる。
優しい声だった。
無理やり引っ張らない。
急かさない。
ただ待っている。
その姿を見た瞬間美都の中で何かが切れた。
もう一人でいたくなかった。
今日は本当に。
「……少しだけ」
小さく呟く。
翡翠の表情がぱっと明るくなる。
「うん」
その笑顔を見て少しだけ安心した。
翡翠の手が美都の手を掴む。
温かかった。
驚くほど。
「行こ」
引かれる。
美都は抵抗しなかった。
雨の中二人で歩く。
繋がれた手は離れない。
そして美都は気付いてしまう。
苦しかった胸が少しずつ楽になっていることに。
一人じゃないただそれだけでこんなにも違うのだと。



