結局。
美都はパンを受け取った。
翡翠は満足そうに笑う。
「偉い」
「だから子供じゃない」
「知ってる」
そう言いながら全然扱いが違う。
美都は小さくため息を吐いた。
でも。
少しだけ空腹だったのも事実だった。
パンを一口食べる。
翡翠は何も言わない。
ただ嬉しそうだった。
「神城くん」
「何」
「ここ好きなの?」
踊り場を見回しながら聞く。
「別に」
「またそれ」
「静かだから」
ぽつりと答えた。
翡翠は少し驚く。
初めてだった。
美都が自分から答えたのは。
「そっか」
翡翠は笑う。
それだけなのに。
なぜか少しだけ安心した。



