結局連絡先を交換することになった。
「ほら」
翡翠が画面を見せる。
美都は小さくため息を吐いた。
「……面倒」
そう言いながら登録する。
翡翠は嬉しそうだった。
「やった」
「何が」
「初連絡先」
「友達いないのか」
「いるよ」
即答だった。
美都は少しだけ口元を緩める。
本当に少しだけ。
翡翠と別れて家へ帰る。
玄関を開けると静かだった。
いつも通り誰もいない部屋。
なのに今日はいつもより静かに感じた。
雨音が聞こえる。
ぽつぽつと窓を叩く音。
胸がざわついた。
頭の中に蘇る。
父親の背中と母親の背中。
閉まるドア。
置いていかれた日全部雨だった。



