家の前まで来る頃には雨は少し弱くなっていた。
翡翠は傘を閉じる。
「じゃあね」
そう言って帰ろうとした時だった。
「神城くん」
翡翠が呼び止めて振り返る。
「何?」
少しだけ迷ったあと翡翠はスマホを取り出した。
「連絡先交換しよ」
美都は眉をひそめる。
「なんで」
「一人でいるの辛い時は連絡して」
その言葉に一瞬固まった。
「そんな時ない」
反射的に答える。
翡翠はじっと見てくる。
「あると思う」
「ない」
「ある」
「ない」
「ある」
また始まった。
翡翠は少しだけ笑う。
「話聞くくらいならできるし」
「別に聞いてほしくない」
「じゃあ雑談でもいいよ」
意味が分からない本当に。
でもなぜか拒否しきれなかった。



