君だけが俺の居場所だった


しばらく無言で歩く。

雨音だけが聞こえる。

不思議だった。

さっきまであんなに苦しかったのに今は少し楽だった。

胸を締め付けていた感覚が薄れている。

隣を見ると翡翠がいる。

それだけだった。

本当にそれだけなのに。

「神城くん?」

視線に気付いたらしい。

「何」

「顔色少し戻った」

翡翠は安心したように笑った。

「雨嫌いなの?」

突然聞かれる。

美都の足が止まりそうになる。

翡翠は慌てて続けた。

「言いたくなかったらいいんだけど」

「……」

「今日ちょっと様子おかしかったから」

責める声じゃなかった。

心配する声だった。

だから余計に困る。

話したくない。

でも翡翠には嘘をつきたくなかった。