「気のせいだ」
少し強い声が出た。
翡翠は目を瞬く。
「ごめん」
素直に謝る。
その顔を見て小さく息を吐いた。
別に怒ったわけじゃない。
ただ触れられたくなかった。
雨の日だけは誰にも。
「……別に嫌いじゃない」
ぽつりと呟く。
嘘だった。
嫌いなんてもんじゃない。
雨の日だけは昔を思い出す。
放課後空は朝からずっと曇っていた。
帰り道美都と翡翠は並んで歩いていた。
住宅街へ入った時だった。
ぽつり。
頬に冷たいものが落ちる。
雨だった。
美都は反射的に空を見上げる。
ぽつり。
ぽつり。
また落ちてくる。
胸の奥がざわついた。
嫌な感覚だった。



