帰り道住宅街へ入る。
橘家の前を通る。
偶然だった。
本当に偶然そう思うことにした。
家の明かりはついていた。
少しだけ肩の力が抜ける。
その時自分が安心したことに気付いた。
「……」
意味が分からない。
本当に。
翌朝教室へ入ると無意識に視線が動く。
そして窓際の席に翡翠を見つけた。
友達と話している。
元気そうだった。
その姿を見て胸の奥にあった重たいものが消える。
「神城くん!」
翡翠が気付いて手を振る。
美都は一瞬だけ黙った。
それから自分でも驚くくらい自然に歩み寄る。
「弟は」
翡翠が目を丸くした。
「え?」
「大丈夫なのか」
教室が静かになる。
周りの友達まで固まった。
そして翡翠は少しだけ嬉しそうに笑った。



