住宅街へ入り家まであと少し。
その時だった。
「姉ちゃーん!」
聞き慣れた声が響く。
緋色だった。
向こうから走ってくる。
「緋色」
「おかえり!」
そして美都を見る。
「あ!」
何か思い出した顔だった。
「病人のお兄さん!」
沈黙。
翡翠が吹き出すから眉をひそめた。
「誰が病人だ」
「元気になった?」
緋色が聞く。
「別に」
「まだ病人」
翡翠が言う。
「違う」
「病人」
「違う」
姉弟揃って同じだった。
緋色は楽しそうに笑う。
その様子を見ながら少しだけ不思議な気持ちになった。
賑やかだった。
うるさいくらいに。
でも嫌じゃない。
むしろもう少しだけ一緒にいてもいいと思っている自分がいた。



