結局おにぎりを半分押し付けられた。
美都は黙って食べる。
翡翠は満足そうだった。
「神城くん」
「何」
「ちょっと顔色良くなった」
「そうか」
「うん」
嬉しそうに頷く。
美都は視線を逸らした。
そんなことで喜ぶ意味が分からない。
でも悪い気もしなかった。
その時だった。
「神城先輩!」
女子生徒が駆け寄ってくる。
生徒会の後輩らしい。
「書類ここに置いておきます!」
「ああ」
美都は受け取る。
後輩は翡翠を見る。
そして少し驚いた顔をした。
「先輩がお昼一緒にいる人初めて見ました」
沈黙。
翡翠が固まる。
美都も固まる。
後輩だけが首を傾げていた。
「じゃ、じゃあ失礼します!」
後輩は慌てて去っていった。
静寂が落ちる。
翡翠は思わず笑った。
「初めてなんだ」
「何が」
「お昼一緒にいる人」
「……別に」
「またそれ」
美都は視線を逸らす。
でも否定しなかった。
翡翠も気付かなかった。
いつの間にか自分がその”初めて”になっていたことに。



