「緋色もそうだから」
「弟?」
「うん」
翡翠は頷く。
「喘息持ちなんだ」
「……」
「小さい頃から顔色とか呼吸とか見てきたから」
「だから?」
「だから無理してる人すぐ分かるの」
美都は黙ったままだった。
翡翠は続ける。
「神城くんも最近ずっと顔色悪いし」
「……」
「雨の日なんて特に」
その言葉に。
美都の指先が僅かに動いた。
「神城くんも同じ」
翡翠は真っ直ぐ言った。
美都が視線を向ける。
「……何が」
「無理してる時の顔してる」
沈黙が落ちる。
「してない」
「してる」
「してない」
「してる」
また同じやり取り。
でも。
今度は少し違った。
美都は否定しながらも。
なぜか強く言い返せなかった。
学校でも。
先生でも。
誰でもない。
この子だけが気付く。
どうしてだろう。
そのことが少しだけ不思議で。
少しだけ苦しかった。
そして。
ほんの少しだけ嬉しかった。



