その呼び方がずるい。 安心する。 だから。 少しだけ本音が零れた。 「ひすい」 翡翠が黙る。 美都から名前で呼ばれることなんて。 ほとんどない。 「うん」 声が少し柔らかくなる。 「どうしたの?」 その言葉に。 美都は目を閉じた。 本当は言いたくない。 情けない。 格好悪い。 でも。 今日は無理だった。 台風の夜。 一人の部屋。 静かじゃないのに。 ひどく孤独だった。 そして。 今は。 翡翠の声だけが支えだった。 「……」 唇が震える。