君だけが俺の居場所だった


昼休みになりいつものように一人で過ごそうとした。

教室を出ようとした時に。

「神城くん」

呼び止められる。

振り返ると翡翠だった。

「何」

「薬飲んだ?」

美都は黙った。

翡翠も黙る。

数秒。

「飲んだ」

「本当?」

「本当」

「じゃあ信じる」

その言葉になぜか少しだけ罪悪感が湧いた。

実は飲んでいなかった。

昼休みが終わる頃美都はふと思い出す。

鞄の中に昨日の薬が入ったままだ。

しばらく見つめる。

そして小さくため息を吐いた。

「……面倒」

そう呟きながらも薬を取り出す。

水で飲み込む。

別に体調が心配だからじゃない。

ただもし飲まなかったことがバレたら。

あいつは絶対うるさい。

それだけだ。

それだけのはずなのに薬を飲み終えた美都の口元はほんの少しだけ緩んでいた。翡翠と話し終わったあと美都はいつものように教室を出た。

階段の踊り場の窓際の定位置。

雨の日によく座っていた場所だ。

今日は曇りだった。

それでもここは落ち着く。

壁にもたれながら外を見ると静かだった。

一人の時間のはずだった。

「やっぱりここだった」

聞き慣れた声がした。

美都はゆっくり振り返る。

翡翠だった。

紙パックのジュースを持っている。

「何してる」

「探してた」

即答だった。

美都は眉をひそめる。

「なんで」

「昼ご飯」

意味が分からない。

翡翠は当たり前みたいに隣へ座った。

「はい」

パンを差し出してくる。

「いらない」

「いる」

「いらない」

「いる」

また始まった。