「え」
翡翠が固まる。
美都も固まる。
自分でやってから気付いた。
何してるんだ。
でも。
離れられない。
翡翠の体温が伝わる。
安心する。
不思議なくらい。
「神城くん……?」
戸惑った声。
美都は目を閉じた。
「少しだけ」
小さく呟く。
「このまま」
その声は。
甘えることに慣れていない人の声だった。
翡翠の心臓が大きく鳴る。
でも。
押し返したりしない。
ただ。
少しだけ肩の力を抜く。
預けやすいように。
それがまた。
美都を安心させた。
夕日が差し込む踊り場。
二人はしばらく。
何も言わなかった。
ただ。
その時間だけは。
誰にも邪魔されたくなかった。



