私は美都の前まで歩く。
「熱あったら休むんだよ」
「子供じゃない」
「病人」
「病人じゃない」
「三十八度七分」
逃げ場がない。
美都は眉をひそめた。
「ちゃんと寝ること」
「……」
「ちゃんと水飲むこと」
「……」
「ちゃんと薬飲むこと」
「母親か」
ぼそりと呟く。
翡翠は吹き出した。
「じゃあね」
翡翠が玄関へ向かう。
その背中を見ていた時だった。
美都は立ち上がる。
ふらりと身体が揺れた。
「ちょっ!」
翡翠が振り返る。
「何してるの!」
「見送り」
当然みたいに答える。
翡翠は呆れた。
「寝てて!」
「客を見送るくらいする」
「病人が?」
「病人じゃない」
またそれだった。



