自分の布団へ入る。 目を閉じる。 でも。 眠れない。 母親のことじゃない。 雨の音でもない。 頭に浮かぶのは。 今日笑った翡翠。 安心した顔。 優しい声。 そして。 自分を抱きしめてくれた温もり。 胸を押さえる。 苦しい。 でも。 嫌じゃない。 神城美都は。 その夜。 初めて気付いた。 ――雨が降っていないのに眠れない。 その理由が。 全部。 橘翡翠だったことに。