「翡翠」 不意に呼ばれる。 翡翠は顔を上げた。 「なに?」 美都は少し黙る。 そして。 小さく言った。 「……ありがとう」 翡翠が目を見開く。 珍しかった。 神城美都が。 素直に礼を言うなんて。 翡翠はふっと笑った。 「どういたしまして」 その笑顔を見て。 美都の胸がまた苦しくなる。 そして翡翠も。 少しだけ胸が鳴る。 雨はもう止んでいた。 けれど。 二人の中には。 新しい感情が静かに芽生え始めていた。