橘家へ向かう道。 雨上がりの匂い。 濡れたアスファルト。 美都は無意識に翡翠との距離を詰めていた。 傘の下。 肩が少し触れる。 昔なら嫌だった。 でも今は違う。 離れる方が不安だった。 翡翠は何も言わない。 ただ。 少しだけ傘を傾けた。 美都が濡れないように。 その仕草に。 胸が痛くなる。 優しい。 本当に。 どうしようもなく。 好きだと思った。 今までの感情。 全部ひっくるめて。 好きだった。 でも。 言えない。 言ったら壊れそうで。 今の関係が終わりそうで。 怖かった。