「神城くん」
翡翠が呼ぶ。
「何」
「一つだけ約束する」
真っ直ぐな瞳だった。
「勝手にいなくなったりしない」
美都の呼吸が止まる。
「ちゃんと話す」
「……」
「ちゃんと隣にいる」
雨の日。
一番欲しかった言葉だった。
美都は目を閉じる。
少しだけ。
本当に少しだけ。
心が軽くなる。
全部は消えない。
傷も。
不安も。
依存も。
執着も。
まだ残っている。
でも。
それでも。
今だけは信じたいと思った。
目を開く。
隣には翡翠がいる。
ちゃんといる。
その姿を見て。
美都は小さく呟いた。
「……約束だからな」
翡翠は笑った。
「うん」
その笑顔を見た瞬間。
神城美都はようやく気付く。
これはもう。
ただの依存じゃない。
自分は。
どうしようもなく。
橘翡翠が好きだった。



