しばらく沈黙が続く。
雨音だけが響く。
やがて。
美都が小さく呟いた。
「父親も」
声が掠れていた。
「雨の日だった」
翡翠は黙って聞く。
「出て行った日」
美都は膝の上で拳を握る。
「喧嘩してた」
ぽつり。
ぽつり。
少しずつ零れる。
今まで誰にも言えなかったこと。
「父親は出て行った」
「……」
「母親は泣いてた」
雨音が大きく聞こえる。
「だから」
美都は笑った。
酷く歪な笑顔だった。
「俺のせいだと思った」
翡翠の胸が痛む。
「俺がいなかったら」
「神城くん」
「最後まで聞け」
初めて少し強い声が出た。
でも。
その声も震えていた。



