「神城くん!」
翡翠が駆け寄る。
慌てて肩を支える。
でも。
美都は震え続けている。
唇も青い。
顔色も真っ白だった。
「大丈夫!?」
「神城くん!」
何度も呼ぶ。
背中をさする。
それでも。
美都の呼吸は戻らない。
その時だった。
震える手が。
翡翠の制服を掴む。
必死に。
離れないように。
溺れる人みたいに。
「……いらなかった」
掠れた声だった。
翡翠が息を呑む。
「俺……」
涙が零れる。
止まらない。
「いらなかったんだ」
ずっと。
ずっと心の奥に閉じ込めていた言葉。
本当は分かっていた。
でも。
認めたくなかった。
「だから父さんも」
声が震える。
「母さんも」
そして。
泣きながら。
初めて本音を零した。
「俺を置いていったんだろ」
雨の中。
神城美都の心が。
完全に壊れた。



