学校へ向かう。 空は暗い。 雨も強い。 傘を握る手に力が入る。 昔のことを思い出しそうになる。 だから考えない。 前だけを見る。 その時。 遠くに見慣れた姿が見えた。 翡翠だった。 胸の奥が少しだけ軽くなる。 自分でも嫌になるくらい単純だった。 「おはよ!」 翡翠が駆け寄ってくる。 少し髪が濡れていた。 「……おはよう」 「眠そう」 「お前もな」 翡翠は笑った。 その笑顔を見る。 少しだけ安心する。 でも。 今日は違う。 安心しているのに。 胸の奥がずっとざわついていた。