帰り道。 ぽつり。 頬に冷たいものが落ちた。 雨だった。 二人同時に空を見上げる。 「あー」 翡翠が苦笑する。 「降ってきちゃった」 小雨だった。 でも。 美都の肩が僅かに強張る。 無意識だった。 翡翠は気付かない。 まだ。 気付いていない。 傘を開く。 翡翠が隣へ来る。 「入る?」 小さく頷く。 肩が触れそうな距離。 近い。 近いのに。 今日は少し違う。 安心する。 でも。 胸の奥がざわざわする。 雨音が大きくなる。 嫌な記憶が少しだけ疼く。 まだ大丈夫。 そう言い聞かせる。