「家どこ?」 翡翠が聞く。 美都は黙る。 「送るから」 「いい」 「良くない」 「……」 「家どこ?」 しつこく聞かれて。 美都はゆっくり目を閉じた。 そして。 ぽつりと呟く。 「ない」 翡翠は固まる。 「え?」 「帰る場所ない」 言った瞬間。 美都自身も驚いた。 言うつもりなんてなかった。 誰にも。 話したことなんてなかったのに。 翡翠は何も言わない。 ただ静かに美都を見つめていた。 雨はまだ降り続いている。