帰り道雨音が響く。
翡翠が隣にいる。
手も繋いでいる。
なのに足りなかった。
もっと近くにいてほしい。
もっと自分だけを見てほしい。
そんな感情が胸を埋める。
「神城くん?」
翡翠が振り返る。
美都は立ち止まっていた。
雨が傘を叩く。
静かな時間。
そして美都がぽつりと言った。
「……違う」
翡翠が首を傾げる。
「え?」
美都は繋いだ手を見る。
そして少しだけ力を込めた。
「今日は半分こじゃ足りない」
時間が止まる。
翡翠の呼吸が止まる。
意味は分かる。
分かってしまう。
胸が苦しい。
嬉しい。
泣きそうになる。
美都は俯いたまま続けた。
「お前がいないと駄目だ」
雨音が響く傘の下繋いだ手は離れない。
そして翡翠の瞳には涙が滲んでいた。



