しばらく他愛もない話をした。
学校のこと。
緋色のこと。
映画のこと。
本当にどうでもいい話。
でも。
気付けば雨音が遠くなっていた。
怖さも。
苦しさも。
少しずつ薄れていく。
翡翠の声があるだけで。
「神城くん?」
少し眠そうな声。
「何」
『眠そう』
「お前もな」
『ふふ』
小さく笑う。
そして。
翡翠は何気なく言った。
『おやすみ、神城くん』
その瞬間。
胸の奥がぎゅっと締め付けられた。
好きとか。
まだ分からない。
でも。
この声を聞くと安心する。
この声が聞けなくなるのは嫌だ。
その気持ちだけは。
もう誤魔化せなかった。



