昼休みの踊り場
翡翠はすぐ気付いた。
「神城くん」
呼ぶ。
美都は返事をする。
でもどこか上の空だった。
「台風気になる?」
翡翠が聞く。
美都は少し黙る。
そして小さく頷いた。
その瞬間翡翠はそっと手を差し出した。
当たり前みたいに。
もう説明はいらない。
雨の日の特別。
二人だけの約束。
美都は少しだけ目を見開いた。
そして何も言わず手を重ねる。
温かい。
それだけで少し呼吸が楽になる。
放課後雨はさらに強くなっていた。
窓を叩く雨音。
ゴォォという風の音。
教室の外も暗い。
そして担任が言った。
『明日は休校の可能性があります』
教室が盛り上がる。
でも美都だけは違った。
もし休校になったら会えない。
その考えが浮かぶ。
そして自分で驚く。
怖いのは台風じゃなかった。
会えないことだった。
隣を見ると翡翠がいる。
笑っているその顔を見て少し安心する。



