「翡翠!」
今度ははっきり呼ぶ。
声が震えていた。
怖い。
嫌だ。
またいなくなる。
そんな考えばかり浮かぶ。
「翡翠!」
もう一度呼ぶ。
今にも泣きそうな声だった。
その時。
廊下の向こうから足音が響く。
「神城くん!?」
慌てた声。
翡翠だった。
翡翠は走ってくる。
リビングへ飛び込む。
そして。
目の前の美都を見て息を呑んだ。
顔色が真っ青だった。
肩が震えている。
今にも倒れそうだった。
「どうしたの!?」
慌てて駆け寄る。
美都は何も言わない。
言えない。
ただ。
翡翠の姿を見た瞬間。
張り詰めていたものが切れた。



