帰り道。
傘に当たる雨音を聞きながら歩く。
それなのに頭から離れないのは美都のことだった。
朝見た表情と雷が鳴った瞬間の顔。
あれは気のせいじゃなかったと思う。
ほんの一瞬だったけど何かを恐がっているように見えた。
「気のせいかなぁ……」
ただもし気のせいじゃないなら美都は何を隠しているのかな。
その頃誰もいなくなった教室で美都はまだ窓の外を見ていた。
降り続く雨。鳴り響く雷。
無意識に拳が強く握られる。
嫌な記憶が蘇る。
忘れたいのに忘れられない。
「……最悪」
小さく吐き捨てる。
教室には誰もいないからこそ漏れた言葉だった。
窓ガラスに映る自分を見る。
無表情な顔。
何も変わっていない。
そう思ったけどその目は少しだけ疲れていた。
美都はまだ知らない。
自分を気にする少女がいることを。
そして翡翠もまだ知らない。
その少年がずっと一人で壊れ続けていたことを。



