放課後教室を出る。
いつもなら翡翠と帰る時間。
でも今日も違う。
昇降口まで来た時だった。
足が止まる。
帰りたくない。
そんな感情が浮かぶ。
自分の家へ帰るだけなのに。
なぜか足が動かなかった。
スマホを見る。
トーク画面。
開く閉じるを繰り返したあと気付けば歩き出していた。
向かう方向は自宅じゃない。
橘家だった。
「……緋色の様子見るだけだ」
誰に言うわけでもなく呟く。
言い訳だった。
自分でも分かっていた。
緋色が心配。
それも本当。
でもそれだけじゃない。
三日間会っていない。
声も聞いていない。
顔も見ていない。
そのことが思った以上に苦しかった。
「……」
足は止まらない。
橘家へ向かっていく。



