母親と会ってから数日が経った。
表面上は元に戻っていた。
学校へ行って昼休みに翡翠と話す。
緋色と騒ぐ。
笑うことも増えた。
でも完全には戻っていなかった。
ふとした瞬間思い出す。
あの日の背中を。
放課後にいつもの踊り場に来ていた。
窓の外は晴れていた。
雨じゃない。
なのに美都は窓の外を見ていた。
何も言わない。
ジュースを持ったまま翡翠は隣に座っている。
しばらく黙っていた。
そしてぽつりと言う。
「今日思い出してる?」
美都の肩が止まった。
「……何を」
分かっている。
でも聞く。
翡翠は少し笑った。
「お母さんのこと」
図星だった。
美都は目を伏せる。
何も言えない。
最近はそうだった。
急に思い出しては胸が苦しくなる。
でも誰にも言わない。



