バタバタと階段を駆け上がる音がした。
「ごめん!」
翡翠だった。
少し息を切らしている。
「先生に捕まってて!」
いつもの笑顔。
ちゃんといる。
無事だった。
その瞬間。
美都の中で張り詰めていたものが切れた。
「遅い」
低い声が出る。
翡翠が固まった。
「え?」
「連絡くらいしろ」
自分でも驚いた。
何を言っているんだ。
翡翠は目を瞬く。
「ご、ごめん」
本当に申し訳なさそうだった。
その顔を見て。
今度は自己嫌悪が押し寄せる。
違う。
責めたかったんじゃない。
ただ。
怖かった。
来ないんじゃないかと思った。
それだけだった。
「……悪い」
今度は美都が謝る。
翡翠は首を振った。
「ううん」
でも。
その瞳は心配そうだった。



