「嫌なんだ」
美都は顔を上げた。
目は真っ赤だった。
「それが嫌なんだ」
翡翠が息を呑む。
今まで聞いたことがない声だった。
痛いくらい真っ直ぐだった。
「お前がいなくなるのが嫌だ」
雨音が止まった気がした。
その言葉だけが残る。
「離したくない」
ぽつり。
零れた本音。
翡翠は何も言えなかった。
胸が苦しい。
嬉しいとか。
困るとか。
そういう感情じゃない。
もっと深い何かだった。
ただ一つだけ分かった。
美都にとって自分はもうただの友達じゃない。
そして翡翠にとっても美都はもう放っておける存在じゃなかった。
雨は少しずつ弱くなっていく。
けれど二人の距離だけはもう後戻りできないところまで来ていた。



