どれくらいそうしていただろう。
雨音だけが響いている。
東屋の中美都は翡翠にしがみついたまま動けなかった。
少しずつ呼吸は落ち着いてきた。
震えも収まってきた。
でも離せない。
手が指が翡翠の制服を掴んだままだった。
「神城くん」
翡翠が優しく呼ぶ。
美都は返事をしない。
したくなかった。
声を出したらまた全部溢れそうだった。
翡翠は何も言わない。
急かさない。
ただ隣にいてくれる。
それだけで少しだけ安心した。
「……ごめん」
やっと出た言葉だった。
掠れた声。
翡翠は首を振る。
「謝らなくていい」
即答だった。
「でも」
「謝らなくていい」
もう一度優しく言う。
美都は俯く。
胸が痛かった。
こんなに優しくされる資格なんてないと思った。
沈黙。
雨音。
冷たい風。
その中で美都はぽつりと呟く。
「……怖かった」
翡翠が顔を上げる。
「今も」
声が震える。
「怖い」
正直だった。
「また」
言葉が詰まる。
「またいなくなる気がする」



