君だけが俺の居場所だった


その時だった。

「姉ちゃーん!」

元気な声が響いて振り返ると緋色だった。

部活帰りらしい。

「緋色!」

緋色は駆け寄ってくる。

そして私の隣の美都を見た。

「誰?」

「同級生」

「彼氏?」

「違う!」

即答だった。

緋色は吹き出した。

「否定早っ」

美都は無表情のまま視線を逸らした。

緋色は美都を見る。

そして少しだけ真面目な顔になった。

「この人具合悪いの?」

私は頷く。

「熱あるみたい」

「じゃあ姉ちゃん送ってあげなよ」

「え?」

「俺一人で帰れるし」

「でも」

「大丈夫だって」

緋色は笑った。

「じゃあ先帰るね」

そう言って手を振る。

私は少し迷ったあと美都を見た。

相変わらず顔色が悪い。

「送る」

「いらない」

「送る」

「……」

「送る」

美都は諦めたようにため息を吐いた。

そのまま二人は再び歩き出す。

同じ方向へ。

まだ知らない。

この帰り道が少しずつ二人の距離を変えていくことを。