近くの公園の雨を避けられる東屋に美都をそこまで連れてきた。
二人とも濡れていた。
でもそんなことどうでもよかった。
美都はベンチに座る。
俯いたまま震えが止まらない。
翡翠は隣に座った。
何も急かさない。
何も聞かない。
ただ隣にいた。
しばらく沈黙が続く。
雨音だけが響く。
やがて美都が小さく呟いた。
「父親も」
声が掠れていた。
「雨の日だった」
翡翠は黙って聞く。
「出て行った日」
美都は膝の上で拳を握る。
「喧嘩してた」
ぽつり。
ぽつり。
少しずつ零れる。
今まで誰にも言えなかったこと。
「父親は出て行った」
「……」
「母親は泣いてた」
雨音が大きく聞こえる。
「だから」
美都は笑った。
酷く歪な笑顔だった。
「俺のせいだと思った」
翡翠の胸が痛む。
「俺がいなかったら」
「神城くん」
「最後まで聞け」
初めて少し強い声が出た。
でもその声も震えていた。



