「……お母さん」
やっと出た声。
届かない。
母親は立ち止まらない。
雨の向こうへ消えていく。
「お母さん……!」
今度は叫んだ。
でも返事はない。
振り返ることもない。
完全に姿が見えなくなった瞬間美都の中で何かが切れた。
「あ……」
息が吸えない。
苦しい。
胸が痛い。
視界が歪む。
足が震える。
立っていられなくて膝から力が抜ける。
そのまま雨の中へ崩れ落ちた。
「神城くん!!」
翡翠の声。
聞こえる。
でも遠い。
呼吸ができない。
怖い。
苦しい。
置いていかれた。
また。
まただ。
「っ……は……っ」
肩が震える。
指先が痺れる。
何も見えない。
ただ雨だけが降り続いていた。



