君だけが俺の居場所だった


それでもまだどこかで期待していた。

今からでも会いたかったって心配してたってそう言ってくれるんじゃないか。

そんな期待がほんの少しだけ残っていた。

だから美都は顔を上げた。

母親を見る。

でも次の瞬間その期待は壊れた。

母親は傘を持ち直した。

そして背中を向ける。

「じゃあ」

その一言だけだった。

美都の目が見開かれる。

待ってってそう言いたかった。

行かないでってそう言いたかった。

でも声が出ない。

身体が動かない。

雨の中母親は歩き出した。

振り返らない。

一度も。

本当に一度も。

立ち止まらない。

どんどん遠くなる。

その背中が昔見た背中と重なる。

父親だった。

雨の日。

置いていかれた日。

遠ざかる背中。

何も変わらない。

まただ。

また置いていかれる。