「元気だった?」
母親が聞く。
その言葉に美都の指が震えた。
元気?
本気で言っているのか。
聞きたいことは山ほどあった。
どうしていなくなった。
どうして捨てた。
どうして迎えに来なかった。
なのに何も言えない。
喉が動かない。
母親は少しだけ目を逸らした。
そしてぽつりと呟く。
「……あの時は仕方なかったの」
雨音に混じる声。
「私も限界だった」
美都の肩が震える。
「一人で育てて」
「……」
「正直、息が詰まりそうだった」
その言葉が胸に突き刺さった。
「お母さん……」
初めて声が出た。
震える声。
でも母親は続ける。
「美都は悪くない」
そう言ったあと少し間を置く。
そして。
「でも」
その一言で全身が強張る。
「あなたを見ると」
母親は苦しそうに笑った。
「昔を思い出してしまうの」



