飛び起きる。 荒い呼吸。 滲む汗。 そして。 目の前に翡翠がいた。 夢じゃない。 本物だった。 「神城くん!」 翡翠が安心したように呼ぶ。 その瞬間。 美都の顔から血の気が引く。 全部思い出した。 名前を呼んだこと。 縋ったこと。 見られたかもしれないこと。 「……忘れろ」 掠れた声だった。 翡翠が目を瞬く。 「え?」 「今の」 美都は視線を逸らす。 震える指を握り締めた。 「全部忘れろ」 その声は。 今までで一番弱かった。