夜の帰り道空は曇っていた。
翡翠が隣を歩く。
いつも通り。
でも美都は違った。
好きかもしれないそう思った瞬間から全部変わった。
笑顔を見るだけで苦しい。
近付かれると落ち着かない。
名前を呼ばれると心臓が鳴る。
重症だった。
「神城くん?」
翡翠が呼ぶ。
「何」
「最近変だよ」
苦笑しながら言う。
「前よりずっと」
美都は答えない。
言えるわけがない。
お前が原因だなんて。
「悩み事?」
「別に」
「嘘」
即答。
いつものやり取り。
「相談してね」
翡翠が言う。
優しい声だった。
「一人で抱え込まないで」
その言葉を聞いた瞬間美都は小さく笑いそうになる。
無理だ。
この悩みだけは。
お前本人なんだから。
そして胸の奥で静かに思う。
翡翠はもうただの特別じゃない。
自分の世界を変えてしまった人だった。



