君だけが俺の居場所だった


放課後の帰り道いつも通り隣を歩く。

なのに今日は妙に意識してしまう。

肩が近い。

手が近い。

声が近い。

こんなの初めてだった。

今までは安心するだけだったのに。

最近は違う。

安心する。

その上で苦しい。

交差点で信号待ち翡翠が何か話している。

でも半分しか聞こえていない。

気になるのは別だった。

翡翠の手。

白い指。

小さな手。

その時向かいから自転車が飛び出してきた。

「危ない!」

咄嗟だった。

美都は翡翠の腕を引く。

ぐいっと引き寄せる。

翡翠がよろける。

そのまま胸にぶつかった。

近い近すぎる。

一瞬時間が止まった。

翡翠も固まる。

美都も固まる。

心臓がうるさい。

耳がおかしくなるくらい。

そして初めて思った。

――触れたくないんじゃない。

――離したくない。

その感情に美都はまだ名前を付けられなかった。