昼休み。
いつもの踊り場。
翡翠はすぐに異変に気付いた。
「神城くん」
「何」
「寝てない?」
美都の肩が止まる。
「寝た」
嘘だった。
昨日はほとんど眠れなかった。
翡翠はじっと見ている。
「嘘」
「寝た」
「寝てない」
「寝た」
いつものやり取り。
でも。
今日は少し違った。
翡翠が笑わない。
「何かあった?」
優しい声だった。
その声に。
美都は少しだけ目を伏せる。
言えるわけがない。
お前がいなくなるかもしれないのが怖い。
そんなこと。
言えるわけがない。
「何もない」
結局そう答える。
翡翠は納得していない顔だった。
でも追及はしなかった。
それが逆につらかった。



