「ごめん待った?」
翡翠が戻ってくる。
「別に」
即答。
でも少しだけ不機嫌だった。
翡翠は首を傾げる。
「どうしたの?」
「何もない」
嘘だった。
何もないわけがない。
ただ説明できないだけだった。
帰り道空を見上げると灰色だった。
厚い雲で今にも降りそうな空。
翡翠も空を見る。
「雨かな」
その言葉に美都の肩が僅かに強張る。
自分でも気付かないくらいほんの少しだけ胸がざわついた。
翡翠は気付かなかった。
でも美都は気付いていた。
雨が嫌いだ。
昔から。
理由は分かっている。
分かっているからこそ考えないようにしていた。
それでも空が曇るだけで少しだけ呼吸が浅くなる。



