その場から離れる。
聞いていられなかった。
断った。
それなのに。
もし次がいたら。
もし誰かと付き合ったら。
そんな考えばかり浮かぶ。
意味が分からない。
本当に。
校門へ向かう途中。
スマホが震えた。
翡翠からだった。
『今日帰る?』
たった一言。
それだけなのに。
胸が締め付けられる。
美都は立ち止まる。
スマホを見る。
返信画面を開く。
閉じる。
また開く。
指が動かない。
さっきの光景が頭から離れない。
そして。
ようやく気付いた。
怒っているんじゃない。
嫉妬でもない。
もっとずっと昔から知っている感情だった。
置いていかれるかもしれない。
また一人になるかもしれない。
ただ。
それが怖かった。
そして今。
一番いなくなってほしくない相手が。
橘翡翠になっていることにも。
気付き始めていた。



