どれくらい経っただろう。
先に目を覚ましたのは翡翠だった。
「……」
時計を見ると一時間くらい眠っていたらしい。
隣を見ると美都はまだ眠っていた。
珍しく穏やかな寝顔。
少しだけ安心する。
翡翠は小さく笑った。
起こさないようにそっと立ち上がる。
そしてトイレへ向かった。
数分後美都が目を覚ます。
ぼんやりした視界。
リビング。
テレビ。
ソファ。
そして隣を見ると誰もいない。
「……?」
一瞬思考が止まる。
翡翠はどこだ。
胸の奥がざわつく。
急激に嫌な感覚が広がっていく。
立ち上がってリビングを見るけどいない。
キッチンにもいない。
胸が苦しい。
呼吸が浅くなる。
そんなはずない。
さっきまでいた。
いたはずなのに。
頭の中で嫌な記憶が暴れ始める。
父親。
母親。
閉まるドア。
置いていかれる感覚。
「……翡翠」
掠れた声。
返事はない。



