食後には雨は完全に止んでいた。
でも美都は帰ると言わなかった。
言えなかった。
帰ればまた一人だ。
また夢を見る。
また眠れなくなる。
考えただけで苦しい。
その時翡翠が隣へ座った。
「神城くん」
「何」
「今日は泊まっていく?」
優しい声だった。
美都は答えない。
答えられない。
でも帰りたくなかった。
沈黙が落ちる。
やがて美都が小さく呟く。
「……いていいのか」
掠れた声だった。
翡翠は目を丸くする。
今までで一番弱い言葉だった。
いていいのか。
それはきっと泊まっていいのかじゃない。
ここにいていいのか自分は必要なのかそう聞いているみたいで翡翠は胸が締め付けられた。
そして迷わず笑った。
「うん」
当たり前みたいに。
「いていいよ」
その一言に美都は俯いたまま強く拳を握りしめた。



