その夜また夢を見た。
翡翠が遠ざかる夢。
何度目かも分からない。
飛び起きる。
時計を見る。
午前三時十二分。
息が苦しい。
汗でシャツが張り付いていた。
暗い部屋。
静かな家。
誰もいない。
「っ……」
苦しくて怖い。
今までよりずっと。
気付けばスマホを握っていた。
翡翠の名前。
通話ボタン。
押すつもりなんてなかった。
なのに画面には発信中の文字。
一回。
二回。
三回。
出ない。
胸が締め付けられる。
やっぱりまた置いていかれる。
頭の中で嫌な記憶が暴れ出す。
四回目で通話が繋がった。
『……もしもし?』
眠そうな声だった。
翡翠だった。
生きている。
ちゃんといる。
それだけで全身の力が抜けそうになる。
『神城くん?』
心配そうな声。
『どうしたの?』
美都は答えられない。
声が出ない。
言えるわけがない。
怖くなったから電話したなんて。



