その時だった。
二階から緋色の声が響く。
「姉ちゃーん!」
翡翠が立ち上がる。
「はーい!」
すぐ返事をする。
そして何の迷いもなく二階へ向かった。
美都はその背中を見つめる。
数秒ただ見つめる。
その時気付いてしまった。
翡翠は呼ばれたらすぐ行く。
優先する。
当たり前だ。
家族なんだから。
でも胸の奥がざわつく。
緋色じゃなくて俺だったら。
そんな考えが浮かんだ瞬間。
美都は目を閉じた。
最低だ本当に。
緋色は大事な弟だ。
比べる相手じゃない。
そんなこと分かっている。
なのにどうしても思ってしまう。
「……俺じゃなくて」
ぽつりと呟く。
誰にも聞こえない声。
そしてその続きを自分でも口にできなかった。



