ガラッ。
教室の扉が開く。
美都は反射的に顔を上げた。
「おはよー!」
翡翠だった。
その瞬間身体から力が抜ける。
安心した。
はっきり分かるくらいに。
翡翠はそんなこと知らない。
いつも通り笑う。
「神城くんおはよう」
「……おはよう」
翡翠が目を丸くした。
「珍しい」
「うるさい」
でも少し嬉しそうだった。
昼休み。
美都はいつもより早く踊り場へ向かった。
約束なんて本当は信じていなかった。
いや信じたかった。
だからこそ怖かった。
もし来なかったらまたってそう考えてしまう。
踊り場へ着くと誰もいない。
胸が冷える。
その時階段を駆け上がる音がした。
「ごめん!」
翡翠だった。
少し息を切らしている。
「先生に捕まった!」
そう言って笑う。
美都は何も言わない。
ただずっと張り詰めていたものがほどける。
翡翠は気付かない。
でも少しだけ目を細めた。
「待ってた?」
「別に」
即答。
だけど今日も説得力がなかった。



