沈黙。
長い沈黙。
やがて美都の指から少しずつ力が抜ける。
制服の袖が離れる。
翡翠は安心したように笑った。
「えらい」
「子供じゃない」
即答だった。
でもいつもの棘がない。
翡翠は立ち上がる。
「じゃあね」
玄関へ向かう翡翠を今度は止めなかった。
ドアが閉まると静かな家で一人になる。
いつもなら苦しかった。
でも今日は少し違う。
スマホが震える。
画面を見ると翡翠からだった。
『明日、絶対行くからね😊』
たった一通。
それだけなのにしばらく画面を見つめる。
そして胸にスマホを押し当てた。
まるでそれだけが支えみたいに。



