『姉ちゃんまだー?』 廊下の向こうから緋色の声が聞こえる。 『もう帰るよー』 翡翠が答える。 帰る。 その言葉に心臓が大きく鳴った。 帰る。 当たり前だ。 ずっといるわけじゃない。 分かっている。 分かっているのに。 怖い。 また一人になる。 その感覚が押し寄せてくる。 しばらくして翡翠が戻ってきた。 「ごめんね」 少し困ったように笑う。 「緋色が待ってるから帰るね」 美都は俯く。 返事ができない。 行くな。 帰るな。 そんな言葉が喉まで出かかる。 でも言えない。 言えるわけがない。